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日本住血吸虫症は皮膚から人体に侵入し、腸間膜静脈、門脈から肝臓に生息する寄生虫である。私自身、医師として本疾患の患者に遭遇することがあった。他に類を見ないCT画像、内視鏡画像、そして、その病名とは裏腹に、患者はフィリピン出身であったことが、印象的であった。現在ではその生活史は解明され、公衆衛生上の対策がなされ、現在では我が国で発症することはなくなったが、過去には農民を中心に多くの人々が命を落とした寄生虫感染症である。 本書では、死体解剖が広く受け入れていない明治時代に遺体解剖に同意した患者を解剖した医師、日本住血吸虫症に感染したと思われる愛猫を研究のため捧げた医師、農家の肥溜めから排泄物を集めて回った医師が導いた研究結果が、点と点がつながるように線となり、日本住血吸虫症の生活史が解明され、撲滅されていく歴史がノンフィクションで描かれている。 我々がこの寄生虫の脅威を感じることなく、当たり前のように生活できるまでの、多くの人々の犠牲と努力が描かれた一冊である。
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