|
『夕凪の街 桜の国』は、3世代の時間軸を通して、戦争の“後”を生きる人々の姿を描いています。 前半では被爆者の心身に残る痛みが、後半ではその記憶を受け継ぐ世代の戸惑いが描かれ、時間を超えて続く影が浮かび上がります。 誰かが大声で悲しみを訴えるわけではないのに、登場人物の小さな仕草や、ふとした沈黙の中に、消えない痛みが確かに息づいている。 こうの史代さんの描く柔らかな線は、広島の日常をやさしく包み込む一方で、その裏にある影をそっと照らし出すように思います。 読み終えたあと、胸の奥に静かな波紋が広がるような、そんな余韻の残る作品でした。
|